Cubase 9が発表されて暫く経ちましたが、使ってみた印象を書きたいと思います。
自分は特にCubase 9の1画面での分割表示(下ゾーン)やMixConsoleのUndo/Redoが可能になったこと、サンプラートラックなどが魅力に感じてアップデートしたのでした。
下ゾーン
自分は今4Kディスプレイを使っているので、1つのウィンドウで分割表示をしたくてこの機能が気になりました。
しかし望んでいたような仕様ではなく、単純に下側のゾーンが設けられ、そこに表示出来るウィンドウも決まったものなのでちょっと残念でした。
かつてDigital Performerを使っていた時、あるバージョンでコンソリデイトウィンドウという名で一画面集約型が登場しましたが、自分としてはこのような感じを望んでました。
記憶が曖昧なのでもしかしたら違っているかもしれませんが、少なくとも今回のCubaseよりは柔軟な感じだったと思います。分割する数も制限はなかったと思うし、そこに表示する内容も自由だった気がします。
自分の場合そこまでミキサーをまじまじと見ることはないので、4Kディスプレイを使っているため肩が凝るのでMixConsoleは上に表示したいのですが、今回のバージョンの仕様だと下側にしか表示されません。また、インサート・センドも切り替える仕様でした。
横側もインストゥルメントラックかメディアベイの片方しか表示されないので、これだとちょっと残念ですね。4Kですので縦にも長いため、自分としていくつかに分割してコントロールルームなど他のウィンドウも表示させたいです。
ということで、下ゾーンは結局使っていません。
MixConsoleの履歴管理
これは待望の機能ですね。何かとフェーダーの値を戻したかったりプラグインの値を戻したかったりすることはありますので、大変便利であります。
ただ直接MixConsoleとは関係ないけど、オートメーションの書かれてないレーンでクリックしてオートメーションが描かれてしまい、フェーダーの値が変わってしまうのはこの履歴管理では戻せませんでした。
これは確か8.5のバージョンでこのような仕様になってしまったと思うのですが、苛ついてます(笑)なにせ自分にとっては8.5は改悪の嵐でした。
具体的にはグルーブトラックにまとめた場合、グルーブトラックは展開していない状態でオートメーションの表示になっているので、選択を解除しようと適当にクリックをすることがあるのですが、その場所がたまたまここだとオートメーション情報が書き込まれ値が変わってしまうことがあります。そして前の値は覚えていないという。
試しにかなり久しぶりに8を起動してみましたが、やはりグルーブトラックのレーンをクリックしてもオートメーションは書き込まれませんね。
これまでオートメーションのロック機能は使ったことがなかったのですが、これで書き込まれることはないので、こまめにロック/解除を切り替えることで対応することにしました。
サンプラートラック
簡易的なサンプラーを使いたいなと思っていたので、付属のサンプラーが搭載されたのは良かったです。
編曲の際、効果音などのオーディオファイルはそのまま貼り付けていましたが、これからは基本的にサンプラートラックに読み込みMIDIで扱うことになりそうです。
高度なことは出来ませんが、開始・終了位置の調整やアタック・リリースのフェードイン・アウト、リバースなど最低限のことは出来ます。
出来ればプロジェクトのフォルダに素材をコピーするかどうかのオプションもあったら良かったかな。
トランスポートパネルの画面統合
これはCubase 9の新機能として大きくは謳ってないと思うのですが、大変嬉しい改善でした。
トランスポートパネルって個人的には無くてはならない重要なものなんですが、重要なんだけど結構邪魔だったりします。
だからなるべく邪魔でないところに表示させておくのですが、作業中たまにその場所にあることが邪魔になったりすることがあり、一時的に移動させてまた戻したりとにかく邪魔なのです(笑)
今回のは最前面表示ではなくメインウィンドウに統合されたので、このようなことは起こりませんし、邪魔にならないように高さも抑えられてます。大変良い改善点だと思いました。
ショートカット
Cubase 9になってからかどうかは分からないのですが、一通り新たなショートカットが存在しないか確認して、便利な望んでいたものがありました。
そのように書いておいて今8.5を起動してみたのですが、やはり9から追加されたショートカットですね。
情報ラインを編集
情報ラインではベロシティやオートメーション情報などを直接数値入力が出来ますが、ここにフォーカスするショートカットはありませんでした。
ひたすらTABキーを押していてばそのうちフォーカスはしていたと思うのですが、どちらにしてもたくさんTAB連打しなければならず便利ではありませんでした。
ですので、いつぞやに独自のユーティリティソフトを作ったり、AutoHotKeyでスクリプトを作成してクリックさせたり個人的に対応していました。
Cubase側で対応してくれたので、良かったと思います。情報ラインって使用頻度は結構高いと思うのですが、何故今まで割り当てられなかったのだろう。
あとはマクロでタブキーを組み込んでベロシティにフォーカスみたいなことが出来たら便利だと思いますが、タブキーに当たるショートカットはないと思うので、難しそうですね。
SONARについて
やや脱線になりますが、SONARではロジカルエディターのようなGUIではなく、それこそAutoHotKeyのようにスクリプトを書いて機能を拡張するCALという機能が搭載されていることを少し前に知りました。CALのような独自のプログラムがCubaseに搭載されていればなぁといつも思います。個人的に、現状のロジカルエディターではやれることが限られると思います。
CALを求めてSONARに移行ということも考えたのですが、しかしどうやらCALはそれ程需要のある機能ではないのか過去の遺産的な扱いになっているようで、放置されている上MIDIしか扱えないし、トータルで見ればやはりCubaseかなと思いました。スクリプトは組めなくてもショートカットキーは豊富で、ロジカルエディターとマクロでそれなりに出来ることは広がりますからね。
画像処理ソフトになってしまいますが、ちょうどPhotoshopのようなエンジンが搭載されていればなと思います。スクリプトって大抵「値の取得」→「その値を元に条件分岐」→「処理」といった流れになっていると思うのですが、ロジカルエディターの場合「値の取得」が出来ませんので、やれることが限られると思います。
値の取得が出来ないというか、ある対象の値がある条件だったら、といった感じでセットになってる感じで、値の取得は処理対象だけですよね。なので、例えば音符Aの位置情報を取得して、その情報に加算減算して音符Bの位置をズラす、とかみたいなプログラム的なことは出来ません。
そういう機能があるならやってみたいなと思うスクリプト処理は、例えば可変クオンタイズです。もしかしたらCubaseのクオンタイズもはじめからそういうアルゴリズムになっているかもしれませんが、現状例えば60%の精度なら全ての音符が恐らく60%で処理されていると思います。しかしグリッドに近い程バラつきの補正度合いは抑えたい、若しくはクオンタイズは不要なので、グリッドからの距離が遠い程強いクオンタイズを掛ける、みたいなのがスクリプトで出来たらなと思ったりしてます。
それとかグリッドを基準ではなくややグリッドの後ろを基準にして上記のクオンタイズをやって、後ろノリクオンタイズみたいな処理も良いかも。
でもよく考えたらこれはもしかしたらロジカルエディタでも似たことが出来るかもしれない。今度試してみようかな。
選択した最初のトラックの名前を変更
これも単純なショートカットだけど、今まで何故搭載されていなかったのだろう…。。長ったらしい名前になってますが、要するにトラック名の変更です。
今まではなかったので、前述のタブ連打で確か3回目くらいでインスペクターのトラック名の部分にフォーカスしたと思いますので、それで対応してました。これからは連打しなくても済みますね。
起動速度
起動速度は速かったり遅かったりしたのですが、速い場合は明らかに以前より改善されていました。
いつかは覚えていないのですが、ある時から起動時のVST2の読み込みがすごく遅くなりました。確か起動に2分くらい掛かってたかな。それが改善され10秒ちょっとで起動するようになりました。
しかしそれは速く起動した時の場合で、OSを起動して初回は必ず遅く、3分くらい起動に時間が掛かるようになりました。原因はVST3の読み込みで、VST2の読み込みが問題なくなったのに今度はVST3の読み込みが難ありになりました。
しかしネットに情報があり、これの根本的な原因はWindows Defenderのようで、VST3フォルダを除外してあげると改善されたのでした。
お陰様で今は快適です。あとは出来れば重いプロジェクトの読み込みも速くなると良いのだけどなぁ…。。
キーエディタの仕様
前述の通り下ゾーンは使用せず従来通り別ウィンドウでキーエディタを開いているのですが、いつの間にか複数のキーエディタが立ち上がっていることに気が付きました。仕様変更があったのだと思うけど個人的には大変不便ですね。
いつ複数ウィンドウになってしまうのか検証してみると、箱をコピーして開く際に発生してしまうようでした。もしかしたら自分だけではないかもしれませんが、箱を度々作るのが面倒なので他のところから箱をコピーしてきて中身を全選択削除といったことをよくやります。その際になってしまうのですね。
コピーをした段階でコピー先の箱が選択されているので、以前は確か自動的にキーエディタのウィンドウもコピー先の内容になっていたと思います。しかし今はそうではないため、開こうとすると新たなウィンドウとしてキーエディタが開きます。
では以前のようにするためにどうすれば良いかと言うと、コピーをしたら一旦選択を解除してあげてからまた選択をすると従来のように既に開いてるキーエディタの内容が変わります。
今までの仕様が癖になっていて、作業中にコピーをしてそのまま削除してコピー元が消えてしまい、暫くそれに気付かず後から何でこの部分消えてるの!?といったことがちょくちょくありました。。
バージョンアップしたので一応一通り環境設定は見てみたのですが、自分が見る限りはこの仕様を以前のに戻す設定はありませんでした。一旦選択を解除して再選択という動作をしなければならないので、不便だと思います。
AutoHotKeyのマウス位置ウィンドウ移動で不具合
以前よりAutoHotKeyでマウス位置ウィンドウを使ってますが、どうもCubase 9になってからプラグインなどの最前面ウィンドウを移動させると空白が表示されるようになりました。
マウス位置でウィンドウ移動(MDI対応)【AutoHotKey】
内側に空白が出来るのではなく外側に広がっているようで、UI自体には干渉してないので良いのですが、気になりますね。
ちなみに少しでもタイトルバーで通常のウィンドウ移動をすると直ります。
気になりますが、動作には問題ないので気にしないようにしよう。
総評
全体的には良い感じになり、良かったと思います。
出来れば8.5の時に変更があった仕様が環境設定で変えることが出来たら嬉しいのですが。
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